LGBTsフレンドリーを目指す企業に伝えたい当事者からのメッセージ

みなさん、こんにちは。ボイスアーティストの手塚弥生です。

弥生
LGBTsフレンドリーな企業を目指したいというご相談をよく受けるので、今日は当事者の私から率直なメッセージをお伝えします。

LGBTsフレンドリーな企業に対する印象

日本中で大注目のLGBTs

最近ニュースや国会でもLGBTsの話題は注目の内容です。

今年の5/6-7に東京で行われるLGBTs日本最大級のイベント『東京レインボープライド(通称TRP)』には、資生堂やドンキ・ホーテなど誰もが知っているような企業が軒並み出展をしています。

▼TRPのブースマップ

参照:東京レインボープライド公式HP

企業は新たなマーケットということで、「LGBTs市場」なるものに関心を寄せられているようです。

「LGBTs市場やマーケット」に対して当事者の私が感じること

私もパンセクシャル(好きになる人の性別を問わないというセクシャリティ)なので、LGBTs当事者です。

「LGBTs市場」に注目した企業が増えることや、国会や国レベルでセクマイ(セクシャルマイノリティ、性的少数者のこと)の生活や保障について話し合ってくれることは大変喜ばしいことだなと感じています。

私は自分がLGBTs当事者だということに対して一切の嫌悪感がありませんし、普段カミングアウトというか、カミングアウトとさえも思わず普通のこととして「妻が~」「LGBTs当事者として~」と言った発言をしていますので、普段自分がセクマイだということを忘れる程です。

でも不便や不利益がないかというとそうでもありません。
生活レベルだとこんなことが起こります。

  • 好きになった人が女性だったので、婚姻届が出せない。
  • 婚姻届が出せないと法的には他人なので、色々と説明が面倒くさい(しかもこれ多い時に日に何度もですよ)
  • 両親が親戚や両親の知人に私と妻のことを話す時、説明が大変そうで申し訳ないなと思ってしまったり

小さいことで言うと、もう慣れちゃったのですが

  • 手を繋いでデートしてるだけで、通りすがりの人にコソコソ言われたり見られたりする
  • 美容院やエステで恋人の話しになると「彼氏さん」と決め打ちで言われ、リラックスしに来てるのに説明をするために頭を使う
  • セクマイだっていうだけで何かしら「セクマイらしさ」を求められる

こんなとこですかね。ちょっと想像しただけでもポンポン出てきました。
普段はセクマイだということで不幸だとは思っていませんが、企業や国がどんな理由にせよ積極的に関心を持ってくれること自体は大歓迎です!!

LGBTsフレンドリーを目指す全ての企業にお願いしたい3つのこと

とはいえ。「むむ」と思うこともしばしばあるのも本音です。
LGBTsについてのコンサルやセミナー、ご相談をこの1年で10件近く受けました。

LGBTsコミュニケーターを名乗っている以上、少しでも分かりやすくお伝えするのですが、LGBTsコミュニケーターとして、一当事者として無視できない違和感を感じていました。

今回はその違和感を赤裸々にお伝えしようと思います。
LGBTsフレンドリー企業を目指す企業の担当者や代表の方にぜひぜひお伝えしたいメッセージを3つだけ、お伝えしたいと思います。
それこそが「名ばかりLGBTsフレンドリー」でなくなるポイントなので、特にTRP出展をする企業のご担当者様はぜひぜひ読んで下さい。

  1. 可哀想な人だと思わないで
  2. 思ったことは何でも言ってOKです、お互いの責任の範疇で
  3. LGBTsと言っても1人1人状況は違うから決めつけないで

順番に詳しく書かせてもらいますね。

可哀想な人だと思わないで

くーたろー
LGBTsの人たちって色々大変ですよね~・・・

これね、本当によく言っていただくんです。
完全な善意からくる発言なので、嫌な気分にはなりません。

ただ、

弥生
すっごい違和感感じます!!!笑

LGBTsは性別や性自認や性的指向などセクシャリティ(性に関する様々な側面)では少数派です。
ですが、結局は同じ人間です。

LGBTs全員がセクシャリティに悩んでいるわけではありません。

私も先ほど書いたように、不便や理不尽だなぁと思うことはあります。
でも「不幸」ではないし、「可哀想」でもないんですよ。

あとね「大変」ではない!!!
セクマイだけが大変かというと、私はそんなことないと断言したくて。

みんなそれぞれ大変なことってあるはずなんです。
みんな抱えてますよね?

「LGBTsの人たちは大変で、可哀想で、サポートしてあげるべき存在」と勘違いしてしまうと、必ず歪みが生じます。

例えば

  • 必要以上に気を遣って話しかけて、まともなコミュニケーションが取れなくて相互理解ができない
  • LGBTsは傷つきやすい人だと思い込んでるから本音が言えなくて壁ができ、結果LGBTs当事者が孤立
  • みんなに知ってもらい理解をする体制を整えた方がいい!と思い込んで、カミングアウトされた内容を勝手に公表

なんてことが起きます。

もちろん適切なサポートは有難いですし、理不尽な状況は改善すべきだと思います。
でも、LGBTsを「可哀想な守るべき人」と捉えた瞬間、自分たちは「守る人」という認識が生まれ、「守られる人と守る人」という対立構図ができてしまうんです。

これではいつまでたっても、同じ人間としてのコミュニケーションは成立しませんし、LGBTs当事者のお客様に自社の良さやメッセージなどの【本意】が伝わりません。

思ったことは何でも言ってOKです、お互いの責任の範疇で

コミュニケーションをする上で、立ち入った話を聞きたくなる場面もあると思います。
それに関して自分の意見を言いたくなることもあると思います。

ストレートの方からしたら、「なぜレズと呼ぶと差別用語になるのか?」と言った言葉の微妙なニュアンスのどこに差別的要素が入っているかは分からないと思います。
事実、それを挙げていくとキリがありません。

参考までに差別用語として一般的に言われているのは次のような言葉です。

  • ホモ
  • レズ
  • おかま
  • おなべ

また、バイセクシャルの人に対して「両刀」なんて表現を使うのも嫌がられることが多いようです。
私も「性別を気にしないパンセクシャル」と伝えたら、「好奇心旺盛でいいですね」と言われてすごく不快でした。

LGBTsと言っても1人1人状況は違うから決めつけないで

よく誤解されることとして、次のような事例があります。

  • 男性を好きだから身体を変えたい、女性を好きだから身体を変えたいんでしょ?
  • ⇒トランスジェンダーの中にももちろんレズビアンやゲイやバイセクシャルはいます。

  • ゲイはみんなオネエ言葉を話し、ガチムチがモテるんだよね?
  • ⇒女性全員が「~だわ」と話さず、マッチョやイケメンが好きなわけではないように、話し方、容姿、好みは人それぞれです。

  • ゲイはゲイが、レズビアンはレズビアンが見分けられるんだよね?
  • ⇒確かにLGBTs当事者から見ると「あの人セクマイっぽいかも」と思うことや、実際それが当たることはあります。
    しかし、それは「目印」のような何かがあるわけでもなく、個人の経験則からそういう目が養われたにすぎません。
    例えるなら「この銘柄をしっているということは、お酒通だな」というように、なかなか一般的には分からない何かを言ったり反応したりすると、ある特定のコミュニティに属している人かな?とアタリがつけられる程度の話しです。

弥生
疑問を抱いたり、直接聞いてみたいことが出るのは悪いことではありません。

私も過去に、ゲイの知人に
「なぜオネエ言葉を使うんですか?」
と質問をしたことがあります。(今思うとかなり失礼ですが)

その方の回答としては
「その方が社会のゲイのイメージに合ってて生きやすいからよ」
でした。

分かりますか?
「ゲイ=オネエ言葉」という社会のイメージがあって、そこにそのゲイの方が合わせているという構図。
いいとか悪いという話ではなくて、こんなことだってあるんですよ、という話です。

当たり前のことなんですが・・・

  • ゲイでファッションに疎い方もいます。
  • レズビアンでボーイッシュな服装を好む方のタイプの女性がフェミニンな服装の女性とは限りません。
  • トランスジェンダー全員が性別適合手術を望んでいるわけでもなければ、見た目が生まれた性別のままの恰好や身なりのままの人も多くいます。
  • バイセクシャルが性に奔放とも限りません。

ステレオタイプなイメージを持って、明確な答えを見つけたくなる気持ちは理解できます。
でも「男性」ってこう、「女性」ってこうと、明確に言い表せないのと同じで、LGBTsもレズビアンやゲイという言葉としてのラベルがつけられていても、その実態は一人ひとりまるで違います。

企業がLGBTsにできることとは

1人1人実態が違うLGBTsに対して、企業としてどう発信すればいいのか?
もっと踏み込んだ言い方をすると、「どうすればLGBTsマーケットに参入できるのか?」
が知りたいところだと思います。

まず、イチLGBTs当事者の私からお伝えすると、やはり「〇〇だからLGBTsフレンドリー」とは一概には言えません。
なぜなら、業態が違えば、できることが違うからです。こちらが望むことも変わります。

例えば、

  • 家族割を適用してる携帯会社なら「同性パートナー」でも利用可にしてほしい
  • 「女性に優しい」を謳っている会社なら、トランスジェンダー女性も考慮してほしい
  • エステやマッサージなど、「身体」に直に触れるサービスの会社なら、「最大限リラックスできる」よう配慮してほしい(既成の男性向け、女性向けの枠を超えて)

と言った具合にです。

正直言って特別なことをしてほしいわけではありません。
特別なことと言うのは、「腫れ物に触るような態度や対応」です。

トランスジェンダー男性が、「男性向け」のエステなどのお店に行きづらいのであれば
「トランスジェンダー男性もご来店歓迎です!」というメッセージを分かるように伝えてくれればいいだけの話です。

男女カップルを想定しているレストランのカップルプランやカップルシートを利用する時に
「同性カップルももちろん使えます!」とどこかに一言書いておいてくれればいいだけのことです。

これって特別な対応でしょうか?

和食レストランに来たお箸を使い慣れない外国人に
「フォークとナイフのご用意あります」と書くのと同じくらい「当たり前のこと」ではないでしょうか。

例えばLGBTでも、「性的指向」の面でマイノリティーなLGB等と、「性自認」や「身体の性」の面でマイノリティーなTでは事情が異なってきます。

例えばエステサロンの場合。
◆性的指向

  • 誰もが恋愛をしたり、恋人を望むという前提で話さない
  • 誰もがSEXを望むという前提で話さない
  • 同性と付き合っているからといって、「同性愛者」だと決めつけない
  • 異性と付き合っているからといって、「異性愛者」だと決めつけない

◆性自認や身体の性

  • トランスジェンダーが全員、性別適合手術やホルモン治療をしているという前提で対応しない
  • 性別適合手術やホルモン治療を一切していなくても「相手の望む性別」として対応する
  • Xジェンダーのように「男性でも女性でもない」と認識している人や、性の揺らぎを感じている人に「性別を決めること」を強要するような対応はしない
  • 性別ごとにオススメの商品が違う場合、それがなぜその性別に訴求したいのか考え、セールストークを改良する。(例:男性向けサプリ→男性にオススメ、ではなく「男性ホルモンの活性化」に着目していますなど)

あたりが考えられます。

LGBTsフレンドリーを目指す全ての企業に絶対に伝えたい心構え

これは当たり前すぎてわざわざ書くことでもないのですが・・・

お客様の前でだけ「LGBTsフレンドリー」を装っても、かならずバレます。
「さっきの人、レズビアンかな?」「えー、バイじゃない?」みたいな、「人のセクシャリティ」をネタにするような会話をしてしまう人は、どんなにLGBTsフレンドリーや性差別撤廃について熱く語っても、残念ながらLGBTsフレンドリーから一番遠い人です。

「私はLGBTsに偏見はないから!」と言いながら「私はレズビアンじゃないから!」と全否定してくる人も、当事者の私からすると、言動が一致しない人だなと感じます。

「さっきのゲイさ~」「あの人、下半身手術したのかな?」など、もしこんな会話をスタッフ同士お店で話していたら、今すぐに辞めて下さい。
お客様の前でとっさに出てしまうものですし、誰が聞いているか分かりません。

「LGBTsターゲットへのPRや広告」を考える戦略会議でも、戦略を考えることに夢中になって「ゲイは」「レズは」と決めつけた発言や粗末な発言は控えましょう。聞こえないと思っていても、思わぬところで当事者が耳にしてしまうことだってあり得ます。

本当に「LGBTsフレンドリー」企業を目指したいのであれば、まずは社長が、そしてスタッフ1人1人が、本気で「性別や性自認や性的指向で人が差別されることがあってはいけない」ということを腑に落とすことです。

そして、そもそも、性別や性自認や性的指向はLGBTsだけの話しではなく、人間全てに関係のある「自分ごと」だと理解できるようになることがベストです。それがLGBTsの先にある、SOGIという考え方です。

LGBTs市場をどんどん盛り上げて下さい。
ビジネスで大いに盛り上げてくれると嬉しいです。
メッキははがれます。逆に想いはかならず伝わります。